日本とフィリピンの間で連続起業
宮下幸治 株式会社アイ・ピー・エス 代表取締役社長

●文:天野 昭・本誌発行人


期待したい「遅い上場」後の連続起業

 2018年6月27日、(株)アイ・ピー・エス(IPS)は、東証マザーズに念願の上場を果たした。宮下幸治・代表取締役にとっては、IPSを起業してから上場までは長い道のりだった。いわば「遅い上場」。しかし、上場後の経営展望は見晴らしがいいようだ。素晴らしい見晴らしの一つ(フィリピンでの通信事業)については本誌40ページ以降に報告記事として掲載した。

 「遅い上場」と書いたが、宮下は1991年にIPSをたった3人の仲間で立ち上げた。宮下はリクルートセンター(現リクルートHD)の通信事業部門で働いていた。リクルートには「独立起業」を称揚するという奇特な企業文化がある。宮下もその一人で、国際電話の販売代理店として汗をかき、粘り腰は、リクルートの「傭兵の一人」として鍛えられた。

 リクルートHDの創業者・江副浩正(1936~2013)は、戦後日本が生んだ最大の企業家の一人といっていい。リクルートHD傘下の従業員数は約4万人、企業数は360社に及ぶ。江副は連続起業の仕掛人でもあった。

 江副は東大新聞部員の一員として、総務部+人事部の問題解決に寄与する「傭兵(リクルート)」が大きなビジネスになることを「発見」した。人手不足にあえぐ現在の日本の姿を予測したようでもある。宮下は「日本⇔比国」の関係の中に、連続起業の答えを見つけ出しているのかもしれない。

 宮下はリクルートの通信事業部門で働き、起業したIPSで、まず国際電話の販売代理業から商売を始めた。それ以降、創意工夫を重ね、誰にも真似ができないような日本とフィリピンを繋いだ各種のビジネスを立ち上げた。

●在留フィリピン人の日本での職業紹介(主として介護従事者) ●廉価な国際電話 ●日本でフィリピンの地上波放送局のコンテンツを衛星で配信●コールセンタービジネス ●フィリピンでの医療(眼科)ビジネス●フィリピンでの通信事業

 2018年度のIPSの売り上げが約60億円に達ようとするところでの上場。上場後のIPSの起業ターゲットは明確だ。連続起業家の宮下幸治の意欲的な活動に注目したい。(文中敬称略)

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