さすが、デジタル放送! 「エリア別差し替えCM」デビュー
地区別データ放送運用システム「AD-JIGSAWTM」を電通が構築

2001年12月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
 地上デジタル放送のカウントダウンが大きくなってきた。一方、BSデジタル放送は開始1年をまもなく迎える。デジタル放送で何が変わる―この問いにズバリ応えるテレビCMが9月13日、BS日テレ放送の『恋のから騒ぎ』(毎週木曜日23:00〜23:30)でお目見えした。トヨタ自動車の提供で、「衛星放送によるエリア別CM素材配信」と、視聴者からの応答データを収集する「双方向型CM」を実現したものだ。そこで番組提供のトヨタ自動車、放送したBS日テレの日本テレビグループ、今回のCMを開発した電通、データセンターなどのシステムをサポートした東芝の各担当者に取材し、新CMのねらいとマーケティング効果、実現までの取り組みなどをレポートする。
(吉井 勇=本誌編集長)

7ケタの郵便番号ごとに
異なるCM素材を配信


 9月13日23時、都内の一室で電通関係者がBSデジタル放送のテレビ画面を見つめていた。番組の『恋のから騒ぎ』が始まると、すぐにリモコンの「d」ボタンを押し、データ放送画面を呼び出した。そしてトヨタ自動車の広告画面が出てくると、「文字化けはないな」などと言いながら確認し、「よかったー」の声とともに拍手が起こった。
 スポンサーのトヨタ自動車(株)で担当した小川英助:宣伝部メディア・イベント室係長も「ホッとしました、正直言って。世界で初めて、しかも本放送ですからね」と声を弾ませた。
 最初に画面を確認したあと、電通関係者たちは郵便番号簿を持ち出し、都内や愛知県内の郵便番号を受信機に登録し、次々とCM画面をチェックしていったのである。
 実は、小川係長が自負する「世界初」の特徴は、ここにある。BSデジタルの受信機では双方向機能ができるように郵便番号の7ケタをはじめ、住所や氏名などを登録する。トヨタのCMは、本編「映像」は全国統一でありながら、データ放送枠を利用して7ケタの郵便番号にあわせたエリアごとに文字情報を差し替えて配信したのである。電通関係者が郵便番号を入れ替えて確認していたのは、こうした仕組みだったからだ。


仕掛けたのは
トヨタの宣伝部


 デジタル放送の特徴を大いに生かしたCMではないか。実はこのプラン、トヨタ宣伝部から仕掛けられたものだという。小川係長は次のように話してくれた。
 「トヨタのような全国に販売網を持ち、各地に販売店や営業所があり、その商圏も整理されているという業種業態の特性から、販売店単位に切り替えられるデータベース・マーケティング構築が必須です。この新たなマーケティングに対応するテレビCMづくりを宣伝部では考えており、その一環として取り組みました。当初、データ放送CMは都道府県単位ぐらいなら素材の切り替えができるという話でしたが、それでは不十分ということで、もっと細かいエリアでできないかと電通に持ちかけたのです」
 トヨタの「もっと細かいエリア単位でのCM素材の切り替え」という要望が、郵便番号7ケタと結びついていったのだ。

広告素材の制作から
視聴者応答データ収集までの流れ

 今回のエリア別情報付きCMをプロデュースしたのは、(株)電通・衛星メディア局の小川由紀夫:業務推進部ISチーム部長をリーダーとするチームだ。
 「クライアントのトヨタさんをはじめ、放送局側の日テレグループ、データセンターをサポートしてもらった東芝さんと実現したのは、放送史上初の“可変する”CMです」と話し、「可変することが本質です」と強調した。電通では、今回の運営システムを「AD-JIGSAW(アド・ジグソー)TM」と名付け、ビジネスモデル特許も取得している。
 では、アド・ジグソーによる広告制作から局への送稿、放送、さらに視聴者からの応答データの収集、クライアントへの通知まで、一連の流れを見てみよう。(参照:図-1)
 広告素材の制作では、トヨタ自動車の各営業所が行う独自のイベントやキャンペーン情報を地区ごとの販売店がまとめ、Web画面からプルダウンメニューで入力することができる。つまり、各店の独自情報が広告素材の基本になるわけだ。そして、東芝のデータセンターにインターネットで送られ、バイナリーファイルが作られる。このファイルが電通にインターネットで送信され、BMLで制作された画面のテンプレートに合わされ、CMコンテンツが制作される。
 (株)東芝が担当するデータセンターでは、「郵便番号と地区別の販売会社を照合し、それぞれのメッセージを格納します。データセンターでは送り先エリアの受信機と、視聴者からの応答データを通知する販売店について郵便番号をもとにコントロールするわけです」と、東芝の大多和求:メディア・ソリューション第二担当グループ長は解説する。
 東芝のデータセンターから送られてきたデータをもとに、テンプレート作成したCM素材はBS日テレに電子送稿される。この段階で一つの問題が生じる。それは「考査」という問題だが、新たな方式を編み出してクリアした(後ほど詳述)。
 BSデジタル放送されたエリア別のデータ放送CM素材は、リモコンの「d」ボタンを押すことで、受信機が登録する郵便番号に導かれ、視聴者エリアを商圏とする販売店の情報から始まり、販売店の「おすすめの車の情報」「おすすめの車の詳細価格」や、双方向機能による「カタログ請求」「プレゼント応募」画面が出てくる仕掛けだ。
 とくにカタログ請求やプレゼント応募の視聴者データは、電話回線でメディアサーブ社にいったん収集され、そこからデータセンターへ送信される。ここで郵便番号をもとに該当の販売店にインターネットで送られ、営業マンのケータイに通知することもできるという。まさに、トヨタの小川係長が望んでいた方向ではないか。

(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい

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