<今月の表紙>
竹内 勝・(株)日立製作所 中央研究所マルチメディアシステム研究部主任研究員
頭の動きから手話の文法情報を分析

2002年2月号掲載(※記事全文)
 このシステムを知ったのは、リアルワールド・コンピューティング(RWC)プロジェクトの最終成果展示発表会だった。手袋型のセンサーグローブをはめ、手指を動かす手話の情報を日本語に変換して表示していたのである。
 研究と開発が日立製作所の中央研究所で行われており、リーダーの竹内勝・マルチメディアシステム研究部主任研究員は「日本手話は一つの言語、日本語とは別の言語です」と研究の基本スタンスを語る。聴覚に障害を持つ人たちの手話について、単語を手指で表すと思いがちだが、頷いたりする頭の動きはもちろん、視線、口の形、さらに上半身までが、文法的な意味を持つ、一つの立派な「言語」だという。
 日立のプロジェクトは、この頭部の動作を情報として取り込み、解析して、それが受け持つ文法情報を割り出そうというものだ。これが実現すれば、「日本語に翻訳する場合、精度が一層高くなります」と竹内主任研究員。
 そのために「2,500サンプルから手話で使われる頭部動作の種類と、その文法機能を分類するという方法で進めました」と小泉敦子・同研究員。この2,500サンプルを集め、分析するという作業の大変さは容易に想像がつく。複数の手話利用の方に350の手話文を表現してもらい、頭の動きなどを二方向から撮影し分析するもので、データにタグをつけるという作業だけでも気が遠くなる。また、手指の動きはセンサーグローブで取り込み、複数の方にやってもらった手話の動きから、その平均値を割り出したものである。「手話表現をする際には、具体的な状況をイメージした上で表現してもらう必要があります」と小泉研究員。つまり、状況の持つ意味情報も伝えているわけだ。
 一言で「翻訳」というが、その道は険しい。「きっかけは人工知能(AI)の研究で、当時、聴覚障害者への支援システムが少ないことに気づき、AIを生かして何かできないかと考えたそうです。そこで、平成2年に手話をテーマにすることが決まり、翌3年から研究を開始しました」と経過を話すのは佐川浩彦・同研究員だ。最終目標は「手話者と健聴者のシームレスな会話」(竹内主任研究員)。「実現の時期は」という問いに、「うーん、10年かな?」と慎重に口を動かした佐川研究員。待つのも楽しみだ。
(吉井 勇=本誌編集長)


(※記事全文)

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