<今月の表紙>
田島利文・NHK放送技術研究所・撮像デバイスチーフ
超小型でプロ仕様に耐える音響特性

2002年8月号掲載(※記事全文)
 5月中旬、恒例の技研公開があった。新生技研ということもあって2万人以上が訪れ、1時間待ちの人気コーナーもあったほど。32の展示タイトルがあったが、その中でも技術のプロたちが一様に驚きを見せたのが、この単結晶シリコンを使ったコンデンサ型のICマイクだ。シリコンマイクとも呼ばれるもので、写真で感じていただけると思うが非常に小型なのである。いや小型というより、米粒の半分以下の微細サイズである。コンデンサ型マイクの基本部となる音圧で振動する薄板の1辺が2ミリという大きさには驚く。
 「この大きさで放送という厳しい仕様に対応する音響特性を持っています」と解説する開発リーダーの田島利文チーフ。
 なぜ技術者たちが驚いたのか。
 その理由を田島チーフはこう話す。「一般の方は、シリコンで作った超小型マイクということに驚かれたようですが、この分野の専門家の方は、それだけではなく、予想を大きく上回る高い性能、さらにはこのシリコンマイクを実現したユニークな技術に驚かれたようです」
 このシリコン製マイクは半導体技術で生み出されるものであり、その魅力は「安く、小さく、高性能」(田島チーフ)なことにある。「論」の世界から「現物」に実現できたのは「30年間、汗を流して蓄積した半導体製造技術のノウハウと、東北大学の江刺先生に微細加工技術などのご指導をいただいたことによります」と田島チーフは力を込めた。
 これだけ小さいと放送用だけではなく、さまざまな分野での応用が考えられる。ケータイ電話のマイクや、補聴器などがすぐに思い付く。すでに民生利用への協力依頼が来ているという。期待が募る。もちろん悪用するワルも出てきそうだが、それは社会モラルの問題として解決すべきものだろう。このマイクで「1曲どうぞ」の声がかかるのは近そうだ。
(吉井 勇=本誌編集長)


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