<今月の表紙>
久保田重夫・ソニー(株)コーポレートリサーチフェロー・工学博士
江口直哉・ソニー(株)コアテクノロジー&ネットワークカンパニー・コアテクノロジー開発本部フォトニクス研究部統括部長・主幹研究員
「回折格子」原理によるソニーの新ディスプレイデバイス

2002年10月号掲載(※記事全文)

 ソニーが6月に発表した新ディスプレイデバイス「Grating Light Valve」(以下GLV)。いくつかの革新的技術を持ち、これまでにないディスプレイを実現するものだという。原理は簡単。マイクロリボンアレイと呼ぶ鏡の働きをする極小の短冊6つで1画素を構成し、1列に1080画素分、短冊の総数6,480本を並べた1次元型。この1列を横に振り、一筆書ならぬ「一帯描」で表示する反射型のディスプレイ技術である。
 このマイクロリボンアレイこそに秘訣がある。6本のうち3本が電気信号で微細に動く。映像信号に合わせて動く量を制御することで、画像の明暗を作り出すのである。このとき、光の「回折」という現象を利用している。この光回折現象は、CD表面の一部が虹色に光るのと同じもので、この原理をディスプレイに応用したのが、スタンフォード大学のブルーム教授であった。
 「ブルーム教授とは、彼の研究室出身者が私の研究室に来たことが縁となって交流が始まった」と久保田重夫フェロー。ブルーム教授のデモ機は「小さな箱の中にGLVを入れ込んだもので、その技術に驚きました」と江口直哉・主幹研究員。当時のデモ機は、のぞき穴方式で、デバイスも2次元の平面構成になっていたという。
 GLVの実用化には一つの壁がある。それは光源となる人工の光、レーザーの開発だ。ところが、ここでも物語があった。ブルーム研究室の隣が、レーザーの世界的権威であるバイヤー教授の研究室だそうだ。バイヤー教授の意見などを参考にしながら、ソニーとして開発を進めたいという。
 この物語の仕上げは久保田、江口の両氏。2人の関係は20年以上。初めのころは、ディスク開発。そう、CD盤を開発していたのである。この表面の「回折現象」が、彼らをディスプレイへと導く。「技術の世界は、10年に一度ビッグウエーブがある。CDから20年、この波にうまく乗りたい」と久保田フェロー。
(吉井 勇=本誌編集長)


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