(社)日本ケーブルテレビ連盟九州支部が主催する平成13年度トップセミナーが2001年11月27日に開催された(於:宮崎県・青島パームビーチホテル)。同九州支部では、総務省や番組サプライヤー、機器メーカーなどのケーブルテレビ事業関係者が一同に会し、時宜に適したテーマを取り上げた研修と情報交換を毎年行っている。今回はパネルディスカッションの講師陣に廣瀬禎彦・アットホームジャパン(株)代表取締役社長、保条英司・(株)インターネットイニシアティブ取締役、樋口健・(株)ヒットポップス執行役員営業本部長を迎え、ブロードバンド時代のケーブルインターネットのあり方について熱く語られた(コーディネーターは天野昭・本誌発行人)。講師の方々の話に真剣に耳を傾ける120名を超える参加者の熱気にセミナー会場は包まれ、大変革のときにあるケーブルテレビ局の期待感と不安感の両面がうかがえるセミナーとなった。当日の模様を、パネルディスカッションを中心にダイジェストでお届けする。
(編集部) |
ケーブルテレビの存在意義を
もう一度考え直す時期にきている
まず、木村輝夫・九州支部長((株)長崎ケーブルメディア代表取締役社長)の開会宣言でトップセミナーは始まった。
「ケーブルテレビは地域の情報インフラとして住民の方々に認識され、定着している。それに対して、我々は営利だけを追求していていいのか。地域にどうやって還元するか。ここへきて、もう一度大所高所からじっくり考え直す時期にきている。ケーブルテレビ業界には大変険しい道が横たわっているが、九州全体ががっちりとスクラムを組んで前進していきたい」(木村・九州支部長)
九州支部が発足したのは昭和61年。会員数は52社。賛助会員を含めると合計67社と、全国12支部の中でも最大規模である。
その後、吉田昇・総務省九州総合通信局局長より「e‐Japan構想など国の方針が示すように、ITは経済再生のエンジンだ。IT革命は産業活動だけでなく、行政さらには教育、医療・福祉など国民生活全般を変えるもの。ケーブルテレビはまさにそのためのインフラを提供する重要な位置付けにある。最近はIT不況と言われているが、日本の場合はまだ緒についたばかり。91年頃からすでにIT革命を推進し、インフラ整備や産業構造の変革等が済んだあとのアメリカとは状況が異なる。このあと日本型革命をどうやっていくかが重要。九州地区のケーブルテレビ普及率は全国平均に比べると低いが、収益面では対前年度比126%と伸びている。IT革命の重要なインフラとして、さらには地域に密着した情報インフラとしてがんばっていただきたい」との来賓挨拶があり、続いて高橋正樹・総務省情報通信政策局地域放送課課長の講演が行われた。
「難視聴解消から始まったケーブルテレビは、自主放送の実施等を経て、現在は総合的な情報通信基盤として確固たる位置付けを得ている。それをさらに発展させ課題を乗り越えるためにも、ここで改めて、地域のために何ができるかという原点を再認識していただきたい。事業者間あるいは地域社会を支える自治体との連携など、さまざまな意味での連携を考えていただくことも必要。ネットワークの提供はもちろん、コンテンツ、アプリケーションについても地域への貢献という視点で積極的な提案と取り組みを期待している。住民・視聴者の期待に応える情報インフラとして発展してほしい」
(高橋・地域放送課課長)
トラフィックが格段に増大するなか、
ネットワークをいかに使いまわすか
続いてパネルディスカッションでは、講師陣それぞれの自社サ−ビス内容や、ブロードバンドネットワークを巡る現状、ケーブルインターネットの持つ優位性や課題などが熱心に語り合われた。
「(株)インターネットイニシアティブ(IIJ)は第2種通信事業者だが、1998年にはソニー、トヨタ、我々IIJで、第1種通信事業者の(株)クロスウェィブコミュニケーションズ(CWC)を設立。CWCのアクセスポイントは旭川から鹿児島まで八十数カ所、100G bpsのバックボーンを運用している。
インターネットの国内トラフィックの量はここ7年で約3万倍に増えている。また、日本のインターネットユーザー数を中国が抜き、アジアエリアでの伸びも非常に激しい。今後、e‐Japan構想により3,000万世帯もの人が高速あるいは超高速環境でインターネットに接続してくるとなると、それに必要なバックボーン回線の容量はとんでもない数字になる。それを安定運用できる通信サ−ビスはいまのところない。トラフィックを振り分けていくルーティング装置もない。これらが2002〜03年で揃ってこないと、今後ブロードバンドネットワークが成り立っていくのかという大きな問題にぶつかる。
我々が、ネットワークをうまく使い回していくための一つの解として提案しているのがCDN JAPAN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク・ジャパン)だ。これは、我々IIJをはじめシスコ、日本オラクルなど8社による任意団体組織で、コンテンツの認証までを含めて、より効率的に配信できる仕組みの実証実験を進めている」(保条英司・(株)インターネットイニシアティブ取締役)
一般家庭向けから、地域の事業者向け、
公共向けサ−ビスへ
「アットホームジャパン(株)は1999年8月に、アメリカのエキサイトアットホーム社と(株)ジュピターテレコム、住友商事(株)の合弁事業でスタートしたケーブルテレビ局向け専門のISP企業。現在21万〜22万のお客さまがおり、その内85%がJ-com関連。2番目の事業は、コンテンツの卸業。こちらは、2000年度のユーザー数がJ-com以外で20万。当社のサ−ビスをなんらかのかたちで利用いただいているお客さまが、合わせて41万〜42万というのが現状。
2002年度は3番目の事業としてソリューションサ−ビスを、アクセスサ−ビス、コンテンツサ−ビスのもう一つ上のレイヤーとして提供していく予定。例えば、いま試行しているのは監視サ−ビス。東京下町のパチンコ店の店内にカメラを設置し、サ−ビスを展開中。これまでのビデオでの監視よりも経費がずっと安くすみ、同様のサ−ビスを養・介護院でも行っている。今後ケーブルテレビ局が提供するサ−ビスは、一般家庭向けサ−ビスから地域の事業者向けサ−ビス、公共性の高いサ−ビスへと多様化していく必要がある。そのための準備をいろいろ整えているところ。
さらに、ケーブル局のインターネット加入者が増えてくると、ユーザー管理にてこずる局が増えている。そこで、加入者管理のサ−ビスシステムをパッケージ化して提供している。また、コンテンツ配信の増大により、版権の問題が大きくなってきた。そのため、我々では版権管理のサービスや、加えて、制作ツールを開発し、制作コストを下げるためのサ−ビスも提供している」(廣瀬禎彦・アットホームジャパン(株)代表取締役社長)
安定した収入のために、
もう一度“放送”に戻ろう
「(株)ヒットポップスは2000年5月に設立、2001年の4月に事業化、サ−ビスをスタートした。中心事業は、衛星と光ファイバを利用したブロードバンド・コンテンツ配信サ−ビス。現在59事業者に配信しており、世帯数では45万世帯をカバー。日本デジタル配信や東海デジタルネットワークといった共同ヘッドエンド事業者への配信も近々開始する。さらに、フレッツADSLへの配信も決定し、2001年度内に配信対象ユーザー数が約180万世帯となり、全ブロードバンドユーザーの約半数に利用していただくことになる。
最近思うことは、“お客様は神様”ではなくなってきたということ。ブロードバンドユーザーは、料金は安いほうがいいが、使い方はヘビー。要望はさらに「より速く、より安く」と高まっていく。このまま1,000万、2,000万とユーザー数が増えれば増えるほど、収益を生むはずのものが、ある日からは逆に圧迫するものとなり、接続事業者は悲観的な状況になるのが見えている。
そこで、将来の安定した収入のために、もう一度“放送”のサ−ビスに戻ろう、というのが我々の提案。たとえCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)でも、予想を超える大量アクセスがあれば品質が下がる。人気があればあるほど、品質は下がる。これを解決するには、“放送”するしかない。つまり、ケーブルテレビの放送用の空き帯域、通常は流合雑音等で使えない帯域を有効利用するIPマルチキャストにより、品質保証のできる多チャンネルIP放送や、ビデオ・オン・デマンド・サ−ビスを行おうということ。これはADSLではできない、ケーブルテレビだけのもの。早ければ2002年の4月、遅くとも6月には全国規模のサ−ビスにしていきたい」(樋口健・(株)ヒットポップス執行役員営業本部長)
ケーブルテレビが持つ優位性と
ラストワンマイルの管理者としての重責
「たぶん、あっという間にケーブル局の放送事業と通信事業の比率は入れ替わり、通信事業が大きくなってくる。それと一番大きな変化は、地域情報インフラという位置付けがさらに大きくなっていくことだろう。例えばNTTのADSLが地域の情報インフラになれるかというと、なれない。そういう意味で、ケーブルテレビは圧倒的な優位性を持っている」(廣瀬氏)
「遠く離れたところにある情報が地域の毎日の生活に必要かというと、決してそうではない。生活に必要な情報は、せいぜい1〜2q圏内にあるもの。そういった情報が現在のネットワーク上にあるかというと、それほどない。地域情報のキーステーションという面でも、ケーブルテレビには大いに優位性がある。
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