<シリーズ・地方民放の地上デジタル“戦略方程式”(第3回−1)>
TSS(テレビ新広島)
系列全体で営放システム標準化

2002年4月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
 1975年に開局したテレビ新広島は、営業収益100億円規模の中核局だ。フジ系列は「仲がよく、運命共同体、目指すはメディア完全優勝」と威勢がいい。とはいえ、TSS独自で行ったデジタル放送の移行期となる今後10年の資金面の経営シミュレーションでは、デジタル設備投資のピークの年にはかなりの資金ショートを起こす可能性があるというものだった。
(文:吉井 勇=本誌編集長)


平均35歳の若いメンバーで構成
社内デジタル推進プロジェクト

 TSS総合企画局次長で、デジタル推進部長の長井十志明氏は、デジタル放送化にむけた社内の空気について、ズバリこう話してくれた。
 「現在の経営陣にとっては定年後のことであり、正確なデジタル放送の姿が見えない今はまだ危機感が持ちにくい。また、中堅や若手にとっては毎日の業務に追われるばかりで、そんな先について議論できる材料を持ちあわせていない」
 こうした"空気"は、どの地方局でもあてはまるものだろう。長井次長は「今年度はテロの影響と不況で営業収益が下がります。2?3割減という深刻な数字になるかもしれません。来年度もこの傾向は変わらないはず。経営の危機感が強くなってくるときこそ、真剣な議論ができる」とも言う。
 TSSでは社内にデジタル推進プロジェクトを、昨年3月に組織化した。平均35歳の若い層、約20人で構成している。このメンバーには、常勤取締役会で議論した今後10年間を見通した経営シミュレーションの数値を見せ、経営の視点を強く意識させたという。しかも「デジタル放送になれば、仕事は増える。が、収入は上がらない」ことを強調し、そうした認識からの議論を呼びかけたのであった。

報道部門の効率化と
大胆な議論が必要さ

 テレビ局の仕事は、世間の評価も高く、注目され、しかも地域の優秀企業としてもてはやされる。こうした甘えの空気とあわせ、開局から25年以上という惰性もあって、「仕事の仕方一つにも、見直すべき無駄が多い」。
 地方のメディアとして重要な役割を担う報道部門。TSSでは、この部門の予算が人件費を除き4.5億円で、スタッフは30名という規模だ。地方局の経営からいえば、この報道部門をいかに効率化し、第2、第3の収入の道を切り開いていくかも大きなテーマになる。そのため「テレビ局のニュースの位置付けをとらえ直すことも始めなければいけない。インターネットの即時性に比べ、テレビは即日性であり、デジタル放送化されると、データ放送をうまく活用することもある」と投げかけ、メンバーに対し大胆な議論を促しているそうだ。
 そうした議論を仕掛けるのは、「デジタル放送化に向かって議論できるレベルが、ようやくそろってきたからです。今後20年、30年を局と暮らす世代が真剣になる、こうした空気にならなければ、デジタル放送化の経営ショックは乗り切れませんから」と長井次長。

テレビ番組とケータイで
双方向クイズの企画

 社内の関心が高まることで、番組作りにもアイデアが生まれてきたという。
 その一例として、TSSのインターネットではクラブ会員を組織しているが、こうした層をマーケティングデータとして生かしていこうという発想が出てきた。そこで電波(テレビ番組)との連動という企画アイデアから、ケータイを活用する形を考え出し、近いうちに、生番組の中でリアルタイム・クイズコーナーをスタートさせていくという。このクイズ番組は、視聴者もリアルタイムに参加する双方向型のもの。仕掛けは、ワンタッチでケータイメールできるように事前登録しておき、三択、四択の問題に答えてもらおうというもので、ケータイによるリアルタイム双方向番組である。「ローカルの生番組として、視聴者はもちろん、クライアントにどう受け入れられるか」。

系列で取り組む
「営放システム」の標準化

 また長井次長は、デジタル放送にむけて、系列としての取り組みが重要であると考え、行動を起こした。それがフジ系列「営放システムの標準化」だ。札幌、仙台、静岡、福岡の中核局と相談し、キー局を事務局とした標準の仕様づくりを始めた。発局情報の仕様統一もあり、技術・知識面で上回る準キー局も幹事社として参加する体制となっている。長井次長の考えはこうだ。「50億規模の小さな局も入れて全国23局で構成されているが、キー局の発想だけで営放システムづくりを進めていくと、弱小の局では導入しにくい高機能で高価なものになる可能性が高い。こうした声を反映させるために、5局が中心になろうと考えたわけです。また、キー局と系列各局という構図から、例えばブロックの単位で、ある程度の機能を持つ、ブロックキャスティングシステムをできる体制を考えてもよいのではないか」。これは標準化を進めながら、それぞれの局と地域性を加味した独自性を両立させるという考えだ。だから、札幌、仙台、静岡、広島、福岡のブロックの中心となる局が動いているのである。系列体制とブロック発想、こうした重層的な動きも、地方局の移行期に求められる一つの流れになるだろう。

(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい

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