サイバーウィングは1997年4月、インターネットのビジネスポテンシャルを試みるために、NEC、大日本印刷、東急エージェンシーの3社が立ち上げた。その後、急速に広がるインターネット広告事業へ傾斜し、国内主要メディアレップ4社の一角を占めている。3月6日から、4大主要ISP合同でブロードバンド広告配信実験を開始した。動画広告の配信技術、視聴効果、ルール化などを検証するものとして、内外の注目を集めている。
(文:吉井 勇=本誌編集長) |
5ISPのメディアレップ
広告配信技術を提供
サイバーウィングは現在、NEC、大日本印刷、東急エージェンシーに、博報堂とADKなどが設立したD.Aコンソーシアムが加わり、4社が出資するインターネット広告の専門企業である。設立時からの生え抜きである広屋修一・取締役事業部長は「会社設立当初はBIGLOBEを利用したオンラインだけで完結しないリアルなサービス事業展開を目指したのですが、BIGLOBEの広告を扱う事業が急速に大きくなり、今では主要メディアレップ4社の一つになってきています」と、当時を思い出す。
「ISP広告媒体の良さをもっと知ってもらうためには、BIGLOBE専業から、もっと広くISP媒体を取り扱うことが必要だと考え、他の主要ISPに呼びかけて広いサービスカバーを実現した」という。この協力でBIGLOBEの他、@nifty、So-net、hi-ho、OCNをまとめたことで、会員数の総計は日本のインターネットユーザーの50%以上になる。そのリーチ力は、ニールセン・ネットレイティングスの調査によると、巨人YAHOO!と同じ7割に達するという実力を得た。
また、広告配信技術の導入を行ってきている。バナー広告では、アメリカのエンゲージ(ENGAGE)社の技術を日本向けにカスタマイズして提供している。
こうした経験を背景に、ブロードバンドの広告モデルづくりがテーマになってきたという。「ブロードバンド広告は、まだまだ初期段階で、『フラッシュ広告』がメニュー化されてきたところ。ストリーミング広告はこれから」。
合同実験の大きなねらい
2つのターゲット
3月6日からブロードバンドユーザーへ実験参加者を呼びかけ、4月末までのスケジュールで「主要ISP合同ブロードバンド広告配信実験」の実査と分析を行った。
なぜ、合同実験なのか。「バナー広告では、サイズは468×60ピクセル、単価もこれぐらいというお手本がアメリカにありましたが、ブロードバンド広告はどこにもありません。信憑性の高いデータを自分たちで収集し、クライアントを説得するしかないわけです」と、広屋取締役は新しい広告市場の「地ならし」作業だと話す。
この実験には、サイバーウィングの広告配信システムと、Jストリームの動画データ配信システムを利用する。広告媒体として主要ISPの@nifty、BIGLOBE、So-net、hi-hoが協力し、コンテンツは小学館が提供した。また、クライアント側では、日本広告主協会Web広告研究会が協力し、NEC、花王、キリンビール、資生堂、大和ハウス、富士写真フイルム、松下電器、リコーの8社が実験に参加した。
実験の具体的なねらいについて「動画広告の表現別効果比較と、テレビCMをネット利用する場合に必要となる手続きをサポートする機構づくり」の2点を広屋取締役は挙げた。
一気に5,000人が応募
期待できるデータ収集の精度
ブロードバンド利用者を対象に実験参加を募集したところ、「1週間で一気に5,000人近くの応募をいただいた。現在のブロードバンドユーザーが300万と言われるので、600人に一人の割合です」と広屋取締役。
まず、動画広告の表現と効果について、2つの形が用意される。
(1)ターゲティングせずに広く見せる「ページ埋め込み型」
実験トップページの画面上に、160×120(100kbps)の動画広告を1回再生するもので、動画画面をクリックすると広告主のホームページにリンクする。CM視聴時間、クリック率を分析。
(2)ターゲティング可能な形態で強制視聴の「動画ファイル差し込み型」
実験協力コンテンツの再生時に、320×240(300kbps)で動画広告を再生するもの。ここではコンテンツ動画の前に出す形と、終わってから見せる形についても比較する。広告主サイトへのリンク設定もある。CM視聴時間、画像サイズ別、再生回数別、クリック率のデータを集め、互いの特性を比較。
上記のようなレスポンスデータの分析のほか、アンケートを併用し、動画広告表現に関する好感度や、ブロードバンド利用者の「TVながら視聴」の実態を把握し、メディアミックス広告に関する基礎データを収集したという。
もう一つのねらいであるテレビCM利用の機構づくりでは、電通、博報堂が進める「CM配信許諾情報管理システム」(ADmission)を経由して確認する。テレビCMが持つ期間や地域などの許諾範囲内であるかどうかを、このシステムで確認できることを実証するもの。CM制作側・クライアント側にある「ネットに流すと許諾範囲外で利用されるのではないか」という不安を解消するためのもので、前述したWeb広告研究会各社の協力で実施した。
技術面では、地域別ターゲティングの動画配信も検証したという。
今回の合同実験は、次世代の広告表現と効果、ライセンス問題まで包括的に行い、そうした可能性を判断する基礎データを集めるものであり、今後の広告市場形成に少なからず影響を与えるものである。
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