<編集長がズバリ問う BBストリーミングのターゲット(第7回)>
(株)アルケミア
「儲かるのはアダルトサイト」
こんな単純発想しかできないようでは、BBコンテンツの将来は絶望だ

2002年7月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
 したり顔で「メディアの立ち上げ期はアダルト系が支える」と解説するメディア識者がいる。本当にそうか。ブロードバンドも「アダルト系」が牽引役なのか。その真偽を確かめるべく、訪ねた。アダルトビデオの老舗であるKUKIグループで、インターネットサービスを担う(株)アルケミアの五十川匡COOにズバリ聞いた−−アダルト系は儲かっているのか。


96年からストリーミング配信
昨日今日飛びついたわけではない

 さっそくアルケミアという社の業務から聞いた。最高業務責任者の五十川匡COOはPCプレゼンを使って、1995年に立ち上げた「KUKIサイト」から、2002年2月22日にリニューアルオープンしたブロードバンド「XCITYサイト」までの系譜を一気に話してくれた。その歩みを聞き、はっきりいって驚いた、脱帽したのである。
 まずはアルケミアの業務から。アダルトビデオ制作でトップ企業であるKUKIグループにあって、インターネットを担当する専門会社であり、グループ内にはCS放送局のアスパイアビジョンがある。現在、2月にサイト名を「THE CITY」からリニューアルしたアダルトサイト「XCITY」を運営し、風俗サイトの「フーゾクDX」もサービスしている。
 では、インターネット対応を振り返ってみる。
・1995年 KUKIサイトとして単独で立ち上げる。
・1995年6月 商用アダルトサイトとして最初の「K.U.K.I TOWER」をオープン。
・1995年10月 有料サイトとしてサービス開始。
・1996年4月 他のアダルトビデオ制作会社と協力してサイト「THE CITY」を開始。
・1996年11月 ストリーミング配信実験に取り組む。ビデオライブ技術を使用。
・1997年12月 オンデマンド型ストリーミング「AVオンデマンド」を開始。
・2001年12月 フルスクリーンで見られるようにブロードバンド化を行い、最高1Mbpsにも対応。

業界横断のデータベースづくり
オンデマンドは全編配信

 「インターネットの特性で海外にも自由に『流出』する」(五十川COO)ことから、多言語化にも早くから対応。1995年に英語版、1998年に韓国語、2002年には中国語と、すでに4カ国語(日本語含む)になっているという。
 そして、この7年あまりの間に蓄積したデジタル・コンテンツ量は膨大で、「テラバイト級になる」と言う。このデータベースは「アダルトビデオ業界を横断するもので、女優別やジャンル別、作品ごとにハイライトやグラビア、現場写真などを検索できる」ようになっている。
 1997年から始めたストリーミングによるオンデマンドサービスは、すでに5,000本近くとなり、方針は「全編放送」で、1本あたり60分−90分という全編をストリーミングで配信している。

独立採算体制
失敗事例は山ほどある

−−● インターネットに取り組まれた当時の考えは。
五十川●1995年当時、CD-ROM事業を担当しており、「インターネットは将来の可能性があるかも」という程度の考えで、明確なビジョンがあったわけではありません。
−− ●推進の体制は?
五十川●CD-ROM制作をやってきましたので、スタッフがプログラミングや圧縮技術に詳しいこともあって、自前スタッフです。小回りが利くという点もあります。
−− ●固定料金の会員制ですね。
五十川●月会費3,000円、プレゼント付きです。事業は独立採算ですから、非常に厳しい環境におかれています。ですから、独自企画をいろいろと立ち上げ、常に満足度を高め、リピートしてもらう必要があります。
−− ●「アダルトサイト系が儲かる」論がありますが、本当にそうですか。
五十川●まず、限られた市場であること。韓国で一時、ブロードバンド化でアダルト系が多く立ち上がりましたが、大部分が倒産しています。「裸だから売れる」というのは見方として甘いですね。確かに、家庭用ビデオやCD-ROMの立ち上げ期には貢献しています。ビデオの登場により家庭でひっそりと見られるようになったこと。CD-ROMはシーケンシャルなアプローチができるということでした。果たしてブロードバンドではどうでしょうか。
−− ●パソコン画面でじっと見ているんでしょうか。
五十川●好きな人はVTRの早送りで自分の気に入ったところを見つけ、何度も楽しむというパターンです。最初から最後までを通して見ているわけではありません。動画を見ながら、スチール写真の静止画を出し、チャットをするというのが、パソコンでアダルトを見る典型的な見方です。
−− ●ブロードバンド化をどう捉えていますか。
五十川●よく聞かれますが、従来の延長上であり、ユーザーは通信料が固定制になってアクセスしやすくなるという期待でしょうか。映像屋として言えば、ようやくまともな商売がインターネットでできるんだということでしょうか。ですが、画質的には、まだまだ「ごめんなさい状態」ですよ。
−− ●あきられない企画づくりが大変でしょう。
五十川●なぜ売れるか。それはトップクラスの作品が続々と登場するからです。それができるのは、著作権を我々メーカー側がすべて持っているからで、2次利用を自由に判断できるからです。


(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい

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