岡山県新見市(石垣正夫市長)で、わが国初の市長選・市議選の電子投票が2002年6月23日(日)に実施された。たいしたトラブルもなく無事終了。人口2万5千弱の新見市には、全国から延べで約300の自治体が視察・調査に訪れた。投票当日は約150社のマスコミが押しかけ、新見市にとっては開闢以来の賑わいとなった。
1890年に第1回帝国議会、第1回衆議院総選挙で「自書式投票制」が導入されてから約110年間、特例を除いて選挙は、候補者の氏名を自分で書いて自分で投票するものと決まっていた。いわば「選挙文化」といってもいい。それほど「自書式投票制」は日本では定着したものとなっている。
1990年に投票制改革を主眼とするEVS(Electronic Voting System)開発・研究を目指す「電子投票研究会(現:電子投票普及協業組合に発展)」が発足。このEVSとは「人の介在を減らせば減らすほど投票結果の精度が向上する」という仮説のDRE(Direct Recording Election 直接記録式投票)理論を具体化したもので、EVSの普及・啓蒙活動の成果として2001年11月には「地方選挙電子投票特例法(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律)」が成立し、今回の電子投票が可能になった。
新見市での電子投票の手順はいたって簡単なもの。銀行のATMマシンを操作するより簡単。投票所に行き、はがきを提示し、従来の投票用紙の代わりにICカードを受け取る。それをタッチパネル方式の投票機に挿入し、画面に表示された候補者の名前をタッチペンで触れるだけ。あとは投票機から取り出した記録媒体(コンパクトフラッシュ)を集計機(読み取り用PC)にかける。実際の集計はたったの25分。法の第1条にあるように「開票事務等の効率化及び迅速化を図る」ことには成功を収めたことは確かだ。
しかし今回の電子投票は、不在者投票や在宅投票などが電子化されたわけではない。欧米ですでに実施されている電子投票とは次元が異なり、その第一歩を踏みだしたものといえよう。選挙システム全体の電子化、オンライン化、最終的には国政選挙まで制度改革されなければ本当のEVSの「威力」は発揮されない。
現在、新見市についで電子投票導入を目指している自治体は、白石市(宮城県)、中津市(大分県)、広島市などとみられる。
(天野 昭=本誌発行人) |