法解釈で混乱するJR駅構内「線路」問題


2002年11月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
 無線LANサービスを展開するモバイルインターネットサービス(株)(MIS)が、JR駅構内での自前の2.4GHz帯無線LAN設備設置を巡って、東日本旅客鉄道(株)(JR東日本)と意見が対立。総務省の答申では、いったんはMIS側の主張を認めたが、その後電気通信事業紛争処理委員会が出した答申では、JR東日本側の主張を認めて問題が複雑化している。
(文:井上繁樹=ジャーナリスト)


無線LANは「線路」か
対立する両者の言い分

 MIS側は、(1)第一種電気通信事業者として無線LANの事業許可を得ており、その公益性、公共性が確認されている、(2)JR東日本の駅はきわめて多くの公衆が出入りする場所であり、公益事業に不可欠である、などとして、第一種電気通信事業者に「線路」設置のために他人の土地や建物の使用権を認める電気通信事業法第73条1項などを理由に、同社の設備を設置することを求めている。以上は総務省の答申で一度は認められたものだ。
 これに対してJR東日本側は、(1)MISの無線LAN設備は電気通信事業法で想定している「線路」にはあたらず、公益事業に必要なものと認められない、(2)JR東日本の管理権・利用権に優先してMISの要求が認められると、JR東日本が事業化を進めている無線LANサービスや旅客情報サービスに影響が出るおそれがある、などとしてMIS側の要求を拒否。これが後に出た電気通信事業紛争処理委員会の答申で認められ、先の総務省の答申と矛盾することになった。

上限のある回線容量を
いかにシェアするか

 答申を見る限りはMIS側の主張に分があると感じる人の方が多かろう。しかし、答申に出ていないJR側の意見を聞いてみると納得できる部分もあるのだ。
 たとえば、MIS側はホームやコンコースへの機器設置を求めているが、JR東日本は「ホームやコンコースは今でもラッシュ時など非常な混雑で顧客に迷惑をかけている状態にある。そこでパソコンを広げた顧客が滞留する可能性があるのは安全上問題」としている。また、2.4GHz帯は「駅構内のPOSレジスターやCDショップの盗難防止装置などに使われているほか、電子レンズが出すノイズの影響を受ける」ことから、「現在JR東日本が試験中の無線LANサービスは喫茶店や待合室など周囲を囲われた場所に限定」したものだ。
 実は他機器の電波競合による影響は速度を落とすことで対応できるのが同無線LAN技術だし、MISのものを含め基地局が増えても、2.4GHz帯域をシェアすることになるだけなので、技術的な観点からすると大きな問題はない。ただし、同周波数帯で使える回線容量の上限は決まっていることから、MIS以外も参入した場合はどうなるだろう。「自社設置の場合は社内調整で対応できるが、他の事業者が加わると調整は難しいのではないか」というのがJR東日本側の考えだ。当然、駅のレイアウト変更の際にも問題になるだろうし、計画中の駅舎員向け情報サービス(運行情報や事故情報などPDAを使って配信するもの)への影響が考えられ、JR東日本側の懸念材料となっている。

5GHz帯の屋外開放で
線路問題は一変する

 JR東日本側がMISの無線LAN設備を「線路」と認められない根拠として、同無線LANによる電波の届く範囲が半径100mで、ほぼ駅構内にしか電波が届かないことを挙げている。ちなみにPHSや携帯電話の基地局の電波は半径500mまで届き、この点は問題がないものとしている。ところが、本記事執筆中に2.4GHz帯より高速で遠距離(半径300m程度)まで届く5GHz帯が屋外での無線LAN利用に解放されるとの情報が入ってきた。9月にも関係省令が整備され、今秋以降には各社がサービスを開始するという。
 5GHz帯に対応した通信機器の普及や利用者の増加具合にもよるが、この議論も陳腐化するかもしれない。というのも、現在5GHz帯も含めた無線LANサービス事業をNTTコミュケーションズが月額固定1,600円で展開中だ。5GHz帯はVoIPにも対応できるので、別途利用料が必要になろうが、NTTの回線使用権料や基本料金の要らないIP電話も手に入ることになる。ノートパソコンやPDAが携帯電話にもなる(多少無理はあるが)。これだけ便利で低コストなインフラに飛びつかないユーザーがいるだろうか?





(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい


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