無料で使える無線LANスポットで地域活性化を推し進めている街がある。名古屋市大須商店街のパソコン販売店組合が中心となって運営している「大須エアースポット」だ。この事業のとりまとめ役である、大須AICの亀井賢司氏と、サービスを支援する(株)メルコの柚木原功氏に話を聞いた。
(文:井上繁樹=ジャーナリスト) |
無線LANを「面」で展開
名古屋市大須地区は大須観音の門前町として、また近年では電気街、ファッションタウンと、さまざまな顔を持つまちだ。ここでは飲食店やホテル、公共施設など「点」での利用が多い無線LANを、商店街という「面」でサービス展開している。
大須商店街では無料でインターネットに接続できる「大須エアースポット」を2002年5月に開設した。IEEE802.11b規格のアクセスポイントは、店舗内だけでなく、屋外でも使えるように2カ所に屋外アンテナを設置し、半径約100mのエリアをカバーしている。Webサイトでの告知や店頭でのデモンストレーションが実を結び、ノートパソコンやPDAを持った若者が、商店街の店内や路上で買い物情報、メールのチェックなどで利用するようになってきたという。
ここに導入されたのは、隣接地区に本社を構える(株)メルコの「フリースポット」だ。商店街の選択が地元びいきと勘ぐる人もいるかもしれない。だが大須エアースポットを企画、運営している大須AICの亀井賢司氏は、「セキュリティ機能の充実や商店の営業時間に合わせてオン/オフできるタイマー機能、そしてメンテナンスフリーな点が選択の決め手になった」と解説。地元パソコンショップ団体(大須AIC)がフリースポットを選択したのは、メルコが国内コンシューマ向け無線LAN製品の販売でトップシェアメーカーであることと、長年の企業ブランドへの高い信頼も背景にある。
利用者を選ばぬ「フリースポット」
無線LANのサービスといえば、「HotSpot」(NTT Com)をはじめとした有料サービスが増えている。無料のフリースポットのポジションは今後どうなるのか。
メルコの柚木原功氏は、この点について、「多くの無線LANサービスは設置する業者によって利用できる客が限られる。また、認証方式がサービスごとに違うので使い勝手が悪い。何より有料では気軽に利用できない。さらに首都圏主導で地方が置き去りになりがち」と、現行の有料サービスの課題を指摘する。
メルコは同社が主幹事を務めるFREESPOT協議会を通じて、パソコンベンダーやISP・競合メーカーなどと連携して、同一のインターフェイスで使えるフリースポット環境の普及を進めることで、新たな市場を形成して共存を図っていくという。同社では大須商店街以外にも宇治山田駅、伊勢神宮会館など、全国6カ所にフリースポットを先行開設。年度内には約3,000カ所に増設予定だ。また、店舗・オフィスレベルで開設できるフリースポット導入キットを7月中旬から全国販売している。
利用エリアの拡大が最優先
無線LAN機器は規格さえ合えば、有料だろうが、無料のスポットであろうが使えるものだ。ユーザー層や利用目的によってすみ分けすることで、無線LANが利用できるエリアを拡大できれば、波及効果による恩恵も大きい。どの陣営にとっても、もちろんユーザーにとっても、今は利用エリアの拡大が一番望まれていることだからだ。
商店街では、今後は周辺地区と協力して、受信エリアの拡張を図るという。
「コンテンツ面では、タウン誌など地元メディアとの連動を探っている。ショップガイドを作ればそれだけで一大コンテンツとなるし、ポップアップ機能などを生かした日替わり広告やタイムサービス(特売)情報なども流すようになれば、利用客へのアピール度も非常に高いものとなるはず」(亀井氏)。
大須の無線LANでの町おこしが名古屋全域を巻き込む日も遠くないかもしれない。
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