<総力特集 地上デジタル放送カウントダウン'03年問題>
移行政策・サイマル問題

2002年12月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
デジタル放送移行の難問
膨大な設備投資コストの軽減策
NHKと民放が大同した共同作戦へ

 デジタル放送への移行で経営陣の頭を悩ますのが、膨大な設備投資である。送信設備、送出設備関係でみても、NHKと民放127局を合わせると1兆円近くにもなる。そのコスト削減の切り札はNHKと民放が共同歩調を取るしかないということで、『地上デジタル放送用送信設備共通仕様書』をまとめた。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


デジタル放送設備のコスト

 デジタル放送に向けた設備投資について全国地上デジタル放送推進協議会長の北川信・テレビ新潟社長は「サイマル放送というのは、アナログ放送を行いながらデジタル放送を開始していくわけで、放送局をもう一つ作ることと同じこと。そのコストは1局あたり約40億円となり、二重の投資で経営の首を絞める」と話す。
 例えば、送信設備と送出設備のコストをみると、NHKは約3,500億円、民放127社で約5,600億円と予想され、合わせると約1兆円に近い額になるといわれてきた。また、民放局ではCMバンクや営放システムなどの設備コストもある。
 この難問、しかもその期限が8年という短い期間での投資となり、一層負担が重たい。

30%以上のコストダウンが可能

 そこで、地上デジタル放送用の送信設備についてNHKと民放がコスト削減のために共同歩調をとったのである。2000年7月に「デジタル放送設備研究会」がNHKとTBS、フジの3局によって始まった動きは、その後在京民放5社が参加して検討を重ね、昨年9月には「全国デジタル送信設備検討会」と発展してきた。そして、2002年5月に『地上デジタル放送用送信設備共通仕様書』(通称、オレンジブック)をまとめあげた。
 この間、一貫して「膨大な設備投資をいかに圧縮するか」を民放メンバーと腐心してきたNHK技術局の砂川清・送信技術センター担当部長は、「これまでのアナログ放送設備の整備と違って、全国の民放、NHKが同じ時期に、しかも短期間に実施することになり、送信設備の共通仕様化ができる絶好のチャンス」と考え、課題を丹念にクリアしていったという。NHKには放送設備の標準仕様となるNHK独自の「BSS」があり、メーカー仕様をベースにした民放局とは大きな隔たりがあった。それを今回、NHKは「捨てて臨んだ」。これはNHKにとっては大英断で、この「やる気」が民放勢に伝わり、共通仕様書作りを加速させたのだろう。
 今回の『共通仕様書』により、量産効果、生産の平準が期待でき、設備整備能力が確保できた。また、必要最小限の性能と信頼性を確保した上で、メーカーの自由な技術開発競争、価格競争を促進するのではないかという期待も大きい。
 この成果はさらに、共同建設や共同発注、そして共同保守といった「共同歩調」を生み、コスト削減の一層の可能性を切り拓いていると砂川担当部長は話す。NHKにある全国42の親局のうち、現在共同建設化が半分以上の親局で計画されているという。
 こうした取り組みから得られる削減効果は、30%以上にもなると予想している。実に大きい。

心配なアナログ機器の寿命

 まだまだ設備関係では悩みを抱える。その一つがマスター設備や、民放局のCMバンク、営放システムなどといったシステム機器が迎える「寿命」と、サイマル期間の時間の問題である。
 つまりサイマル期間中は、デジタル放送用とアナログ放送用の両輪体制が必要であるが、長年運用してきたアナログ放送用の設備機器が寿命を迎える局が一部にあるという。2011年の停波スケジュールに合わせてやりくりするようだが、もし何らかの条件で寿命が尽きたらどうなるか。その後の完全なデジタル放送体制では無用とわかりながらも、更新発注という事態が生まれる。そのため、各局ではアナログ機器の耐用年数を見る一方で、デジタル放送との共用を考えながら、最善の方策づくりのためにメーカー間と活発な情報交換が行われている。



地上デジタル移行の段階で
最初で最大の難関となる“アナアナ変換”
現在、どこまで進んでいるのか。

 当初、約800億円であったアナアナ変換の費用が、「さて始めるか」と具体的な段階になったら、あれもこれもと対象地域が増え、挙句の果てに予算も1,800億円と驚くほど膨れ上がった。このアナアナ変換の対策作業はどこまで進んでいるのか。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


面倒なアナアナ変換作業は
日本の混雑極まる電波事情のため

 アナアナ変換(略して「アナ変」)−−これは現在使っているUHFの周波数帯を、地上デジタル放送で使用する場合に実施する移行時の措置である。
 簡単に言うと、現在使用しているUHFの周波数帯を地上デジタル放送用に明け渡す必要から、現行のアナログ放送継続のために別の周波数帯へ一時期移動する作業である。例えるなら、住んでいた家を建て替える際、仮住まいへ転居するようなもので、新築が終われば仮住まいは引き払う。この仮住まいへの引越しを「アナ変」と呼んでいるわけだ。
 自宅の土地に余裕がある場合、新しく建て直す場合もこれまでの建屋に住みながら進められるが、土地のないときは仮住まいを余儀なくされるのと同じで、周波数に余裕のあるエリアではアナ変は不要だが、逼迫エリアでは周波数帯の移動が必要というわけだ。
 アナ変の対象世帯は全国で約426万にものぼる。2003年から始まる東名阪をみると、東京が約150万、名古屋が約15万、大阪が約50万の計215万にもなる。

送信側、受信側の両者で作業
作業事務の担当はARIB

 このアナ変作業のために、電波利用料から1,800億円が予算化される。この予算は、送信側の変更作業に2割(400億円)、受信側の作業として8割(1,400億円)が予定され、給付金として措置される。この作業を事務移管されたのが(社)電波産業会(略称、ARIB)で、給付金の事務取扱い、受信側の実態調査・設計、広報活動への協力を行う。
 送信する放送局では、約3,500局の中継局が対象となり、移動する周波数帯の送信設備の設置と作業が必要になる。これまでの電波と移動した電波の2つを送信し、そのエリア全体の受信側のアナ変作業が終えた段階で、変更前の周波数によるアナログ送信を止め、デジタル波に移行していくという手順になる。
 放送局側は、すでに送信設備の発注に向けて申請手続きに入っている。関係者によると、「メーカー発注してから納入までに半年ぐらいの時間がかかる」というが、対象が限定している送信側の動きは見えやすい。
 問題は受信側の作業にある。テレビやVTRのチャンネル変更の作業を1軒ずつしらみつぶしに展開する。作業そのものは、アンテナの向きの変更と、テレビなどのチャンネル設定を変更するもので複雑ではないが、1軒ずつ訪ねるという手間が大きい作業となる。この実施計画づくりを担当する指定機関として、電波技術協会とCATV技術協会の2つが決まり、具体的な作業工事をまとめる工事統括社を現在公募しているところだ。
 このアナ変段階でも「混信は出るはず。どう現れるか、それはやってみないとわからない」と関係者も頭を抱える。こうした難問の解決に「近道」はあるのか。

アナ変の告知で強力援軍
該当地区限定の告知技術登場

 こうした難作業を進めるとき、やはり広報活動が重要となる。チラシなどの紙媒体で知らせるのも一つだが、やはり「テレビのことはテレビ」ということで、大阪の讀賣テレビ放送の技術局から提案された。それは「中継局スーパーシステム」である。
 この中継局スーパーシステムは、すでに行われている文字放送システムを利用して、アナ変対象の中継局のチャンネルを見ているエリアだけにメッセージを出すことができるもので、エリア対象世帯に的確な告知を実現してくれるものだ。しかも時刻指定の送出ができ、複数の中継局に別々の情報を送出することや、CM放送時には自動でオフもできるというもの。また文字多重放送を実施していない局でも採用可能なように、フラッシュメモリーを使ったシステムも開発されている。


(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい

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