データ放送の実施に向けて
動作検証や番組とCMの交換基準に課題あり
民放連も技術研究部会で動き出す
BSデジタルのデータ放送に厳しい評価を聞く。「面白くない」「役に立つ情報が見えない」など、大雑把に括った意見が多い。そういう方々はクイズ双方向番組『TIME
OVER』(BS-i)が毎回2万人を超える双方向参加があることをご存知だろうか。しかもリピーターが7割以上というから、すごい。捨てたもんじゃない。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)
BS-iのデータ放送コンテンツを制作する(株)トマデジの動作検証室をのぞくと、各メーカーの受信機によって異なる動作時間をシミュレーションして、最後の仕上げを行っている。これはデジタル放送の宿命かも知れない。放送局側で圧縮のエンコードをし、受信側で解除するデコードのプロセスがあるため、送信設備やチューナーのメーカーで処理スピードが違うことになるわけだ。余談だが、デジタル放送では「時報」の放送ができなくなるそうだ。理由は、前述した処理スピードに違いがあるからだ。
ただし、これも放送規格として決まった範囲内の問題であり、運用レベルで乗り越えるしかない。この運用レベルにも課題が多いとの声も上がっている。
例えば、CMの交換では本編映像1本に対しデータ放送用コンテンツを局数分用意しなければいけないとか、視聴者から応答されたデータの形式が現在のBS民放局間で差があるため、データ変換の手間が必要となっているなど、無駄なコスト増だと指摘する代理店関係者もいる。
BSデジタルは1局だけの送信設備であるが、地上デジタルではネット系列全体の設備レベルが絡む。すべてを作り込んだデータ放送コンテンツになるのか、局ごとに情報を加味できる素材提供かでも変わってくる。また、動作検証の設備も、全局で用意するようなものでもない。検討する課題は多い。
また、双方向サービスを支える視聴者データベースの構築がある。ここでは系列よりも、同一地域の他系列局間の連携が相応しい場合もあるだろう。
こうした課題に対して民放連では、「デジタルデータ放送技術研究部会」を設置し、その下にあるシステム作業班とサービス作業班の2つの作業班を軸に、データ放送の可能性を啓蒙しながら、具体的な局内設備、ネットワーク伝送、番組交換基準などを検討している。研究部会長の田村信二・日本テレビ放送網(株)技術統括局長によると「やはり、番組連動型に可能性を感じており、独立型では情報内容をもっと検討すべきだと思っています。また、データ放送CMの交換については、その必要があるかないかを決めた上で、基準作りということになります。最終的に民放連・営業委員会がどう決めるかです。現在、営業委員会の下部組織に提案しているところです」という状況だ。
BSデジタルで始まったデータ放送は、地上デジタルによってより細やかなサービスになっていく。「最低限の双方向機能を搭載したテレビが全家庭に普及したとするなら、これはすごいインフラではないか。しかも、リターン情報を処理するバックチャンネル機能があるわけです」と訴えるトマデジ関係者の声は、マーケティング関係にとって大いに刺激されることではないか。
地上デジタル技術規格は電波障害に強い
果たして「そう言い切れる」か
起こりうる可能性を挙げてみると──
どこからの放送波でテレビを見ているかなど、これまで誰も気にしていなかった。それがアナアナ変換のエリアでは、放送波の発信元である中継局が問題になる。さらに、デジタル放送が本格化すると、どういった電波現象が出てくるかは未知のゾーンというのが、テレビ技術者の本音だ。「電波は生き物」とは、よく言ったものだ。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)
全国426万世帯が対象となるアナアナ変換時から、電波障害が考えられる。
UHF帯域内で周波数変更するわけだが、一定期間、旧と新の2つチャンネルを送り出す必要があるため、NHKと民放合わせて最大で14チャンネルの電波が飛び交うことになる。受信側は入力オーバーとなり、障害が生じる可能性がある。さらに、デジタル波とアナログ波の混在となった場合も障害の可能性がある。また、視聴者が遠くの電波を受信するとか、屋内の配信先がやたらに多い場合、ブースターで増強するが、こうしたケースも受信障害になる。
地上デジタル放送の特長がもたらす障害もあるという。マルチパス妨害に強いというが、建造物障害などで実際にどう現れるのか、想像できない。「これまでのアナログ放送よりも狭い範囲になると思うが、実際に始まらないとこればかりは−−」。
電波の有効利用をもたらす単一周波数ネット(SFN)でも、障害の原因となる。サービスエリア周辺部では、隣接する中継局との間で互いに影響があり、同一チャンネル混信や隣接チャンネル混信などが出る。人工的な雑音であるパルス障害やフラッター障害などへの対応も必要となってくるだろう。
中継レベルでも、SFNの放送波中継が問題を生む。SFNでは送信信号が受信部に回り込むという妨害が起こりやすい。また、海や湖のような地形の影響も出てくるなど、これらも実際の電波を確認するしかない。
こうした技術課題もさることながら、ビル陰障害などにどういったルールで対応するかという社会問題が出てくる。これまでのアナログ放送では「建設省の次官通達」で、原因者負担ということで障害対策が行われてきた。地上デジタル放送は後からのスタートである。誰が原因者なのか。そのコストは誰が負担すべきか。非常に悩ましい問題である。
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