<総力特集 地上デジタル放送カウントダウン'03年問題>
新サービス展望

2002年12月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
テレビ放送の近未来型サービスとなるか
1セグ放送ケータイ受信
メタ情報と連動した番組やCM提供に可能性大

 ケータイがテレビの受信機になる。それだけで何かが生まれそうな気がするではないか。すでに地上デジタル放送の技術を検証する東京パイロット実験で試みられ、これから具体的なサービスに向けたプランづくりが始まる。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


 「技術課題」の1セグ放送規格(24頁)でも紹介したが、現在ケータイ受信を実現する「1セグ放送」用の運用規定づくりが暗礁に乗り上げている。当初、MPEG-4で計画通り進んでいたが、MPEGライセンスを管理するMPEG LAから有料化の動きが出て、その交渉などのためにここ数カ月、動きが止まっているという状況だ。
 ケータイ受信に期待が集まる理由の一つが、現在テレビの受信時間が平均で3.5時間程度。ゆるやかな低下傾向があり、31頁の[図表8]が示すように視聴層の高齢化という問題にぶつかっている。若い世代が使うケータイへの進出は、将来的に重要なテーマだということである。
 では、サービスとして何が考えられているのか。東京パイロット実験などで垣間見ることができた。TBSと博報堂、NTTドコモ、NTTデータにより共同実施された「東京パイロット実験−フェーズ3」(2001年12月実施)で興味ある取り組みが行われていた。
 それは、“いつでもどこでも”という受信のスタイルだけでなく、コンテンツに付与されたメタ情報と、登録された個人プロファイルを組み合わせることで、視聴者が興味を持ちそうなCMや番組関連の情報を提供するという、視聴者個人をターゲットにしたサービスが公開された。今後、広告表現の手法や、効果測定などが整えば、地上デジタル放送の近未来サービスとなることを強く印象づけた。
 今後、運用規定が確定すれば、メーカー各社は一斉に1セグ放送に対応したケータイ電話の開発を急ぐだろう。そのとき、サービスの具体案とビジネスモデルを提案できるのは、どの局になるのか。



2003年から地上デジタル放送がスタート
受信できる地上デジタル対応テレビは
どれぐらい普及すると予測されているか

 年初に発表出される(社)電子情報技術産業協会(略称JEITA)の『AV主要品目世界需要予測』(2002年1月発行)で、2006年までの需要予測が発表されている。BSデジタル、地上デジタル対応の受信機(チューナーとテレビ)を740万台と予測している。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


 [図表7]を見ていただきたい。2000年から2006年までのBSデジタルと地上デジタルを受信できるデジタルテレビとデジタルチューナーの動向予測である。なお、110度CSデジタル放送については、BSデジタルとの共用によって弾みがつくと期待されている段階での数値である。
 2006年までの特徴として、3,000万台以上も出荷された1995年から1997年のCRTカラーテレビが、ちょうど買い替えサイクルの8〜10年目を迎える。当時、「大型テレビ」がブームとなり、大画面化が進んだときでもあった。
 とくに地上デジタル放送は、ほぼ100%普及しているアナログ受信機からの移行であることから、大型テレビだけでなく、中型以下のテレビにどう波及させていくかが注目される。2004年のアテネ五輪、2006年のドイツW杯、2008年の中国五輪といったスポーツイベントによる加速効果も期待されている。
 最近のプラズマテレビや液晶テレビが好調なように、新規商品の登場が市場を押し上げることも大いに期待できる。デジタル放送を生かしたハードディスクレコーダーやDVD録再機、ホームシアターなどの広がりも波及効果をもたらすと考えられている。
 ただし、課題も大きい。「2011年アナログ放送の停波」と言いながらも、いつまでも安い4:3画角のアナログテレビが市場に売り出されていては、「2011年停波」は単なるお題目に終わる危険性を孕む。それは、2007年に衛星の寿命が尽きるBS先発機のBSアナログ放送でも同じことが言える。BSアナログ用のチューナーを内蔵したテレビを、いつまで発売し続けるのか。テレビ業界として、どういった戦略を考え、国民の信頼を得るのか。アメリカではFCCのパウエル委員長が私案として「DTV受像機のガイドライン」を4月に示し、DTVチューナー内蔵テレビの標準装備スケジュールを出している。



ケータイ利用に意欲
有料課金サービスのビジネスモデルづくり
双方向型の番組づくりを生む最強コンビ

 ローカル民放で興味ある取り組みが動き出した。メディア王である地上テレビと新進気鋭のケータイ。両者を組み合わせるもので、ねらうは「参加型番組づくり」あたりか。地上デジタル「1セグ放送」のケータイ受信も期待されるが、国民的普及となったブラウザフォンの機能を駆使した番組連動型が模索されている。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


ケータイだけのサービス
RKB「ホークスチャンネル」

 福岡を拠点とするRKB毎日放送は、地元のダイエー球団と連携して「ホークスチャンネル」をケータイのサイト上に立ち上げた。月額300円の会員制による有料サービスで、時々刻々の試合経過をはじめ、エピソード・コラムなどの独占的なメッセージを楽しむことができるものだ。
 ホークスチャンネルを立ち上げたRKBの久保敦・iビジネス開発室担当はケータイだけのサービスとした理由を、「パソコンのブロードバンドサービスでは、ケーブルテレビのペイパービューなどとの差別化ができない。ケータイは決定的な差別化ができる。テレビにしろ、パソコンにしろ、固定受信型ですが、ケータイならいつでも、どこでも思い立った時に見ることができる。この特性を使いたかった」と話す。

本命は番組連動した
ケータイの利用

 ホークスチャンネル以外でもケータイ活用を仕掛ける。ケータイとテレビの連動型番組『グラビアグランプリ』。人気投票のツールとして活用した他、KDDIがスポンサーということもあって、グラビアアイドルたちの普段をムービーメールで配信したり、壁紙のダウンロードサービスを展開した。これまでのハガキやFAX投稿から、ケータイというメディアの持つ発展性を確かめることができたという。
 また、テレビ通販番組と連動したケータイのサイトを用意し、放送と併せてサイト展開を行った。この取り組みについて久保氏は「あまりケータイ利用を宣伝せず、素直にメディアパワーを確かめることにしました。結果から言えば、売り上げの5%がケータイからの申込みでした」と話すが、課題もあったという。「品代を通話料と合わせて回収してもらいたいのですが、実現にはカベが多い」。例えば、未回収分の責任分界をどうするかといったことである。

クイズ番組連動
思ったより少ない参加者の反応

 同じ九州にある大分放送(OBS)では、13回にわたって土曜日の朝ワイド番組でケータイ参加による「クイズ」を行った。番組名は『KABOSUたいむ』。番組中のケータイ参加クイズを担当した永田武士・テレビ制作部ディレクターは「視聴者全員を巻き込む参加型のクイズをやりたかったんですが、インターネットを利用するには自社サーバーの増強などの課題があります。ブラウザフォン(ドコモのiモード)を使うことで、システム上の課題をクリアできました」と話す。
 『KABOSUたいむ』で利用したシステムは、ドコモが提供する番組連動支援「dmwどっとtv」のテストサービスであった。iモード限定のため、クイズの進行を番組の中で紹介できない制限はあったが、番組の進行に合わせて、ケータイ画面に出題される5問のクイズに答える形で進んでいった。
 8〜9割から「楽しい」という好意的な反応ではあったが、参加者は最高時で約400人と「思ったより少なかった」と話す永田ディレクター。その原因について「ID登録や番組コード入力といった操作手順がややこしく、最初につまずいた方も多かった。何しろ、iモードユーザーだけというシステム上の制約から、アクセス方法を番組内に組み込むことができず、これが大きかった」と振り返る。
 課題は山積みだが、ケータイとテレビ番組の連動への期待は高い。番組の牽引力で双方向サービスをやさしく展開する。ここに「金になるメディア、課金を成功させた唯一のメディア」と述べたRKB久保氏の着眼は、放送の新規事業を模索する多くのメンバーと共通するものだろう。



双方向サービスとして期待高い
「テレビ通販」事業だが
それほど単純には軌道に乗らない

 地上デジタル放送の双方向機能を使う期待の「テレビ通販」ではあるが、事業として軌道に乗せるためには何が必要か。そこで、実績を確実に積むTBSグループと、テレビ通販の世界的な企業であるQVCに、取り組みのポイントから聞いた。
(大石 収=月刊ニューメディア編集部)


TBSメディアコマース事業部
利益より局の信頼感を

 テレビ局の新収益源として、通販関連事業が注目を集めている。(社)日本通信販売協会の調査によると、業界全体の売上高は2兆4,900億円(2001年度)と推計される。
 地上民放の中でもTBSでは、自社の各メディアを統合する組織「メディアコマース事業」をいち早く立ち上げ、先進的な通販事業活動を展開している。同事業部門の2001年度売上高は前年比10%増の約45億円と、着実に業績を伸ばしてきた。
 同社の中尾聡・メディアコマース事業部プロデューサーは、「全体で現在月間約200商品を扱っている。メディアや時間帯ごとの視聴層の違いが、購買商品にも色濃く反映される点で興味深い。また、通販発のヒット商品も登場してきた。今後、ケータイやPDAとの連動で、より個人ニーズに即した商品情報提供が可能になるだろう」と事業への手応えを語る。
 杉原啓介・開発局副理事は、地上デジタル放送ではさまざまな可能性が高まることから、期待感を表しつつも、「データ放送を従来の文字放送に毛が生えた程度にしか考えていない方々が大半だと思うが、実は、可能性はすごい。データ放送のデータとはソフトウェアのことであり、プログラムの組み方次第で大概のことはできる」と話す。続けて「自社内で一元化した背景には、顧客データの管理責任がある。販売商品でも言えるが、放送局としての信頼感を裏切らない企業努力が第一。また、買い物の面白さを伝えるエンタテインメント性を加味したコンテンツ創出が、媒体の広告価値を高めることになる」と総合的な取り組みの必要性を述べる。
 放送受信端末による双方向機能の利用は、機器のデザイン、操作性によるところが大きい。ちなみにBS-iショッピングでは現在、STBと電話からの注文が半々くらいとのこと。文字入力型よりも項目選択型のような使い勝手のよい端末の提供が、今後の通販利用者拡大にも大きく影響するものとみている。

テレビ通販の雄QVC
地上デジタル放送の参入は歓迎

 世界的なテレビ通販会社QVCジャパンの佐々木迅・代表取締役社長は、「地上デジタル局の参入は、産業としての認知やイメージの向上とともに市場拡大にもつながる」と余裕。それは「QVCという企業ブランドを信頼していただいている顧客が多い当社の場合、放送形態だけでなくビジネスモデルも異なり、競合する部分が少ない」と考えているようだ。しかも、商品買付けから商品配送まで一元管理した自社システムを堅持するため、現時点では地上テレビ局との連携は想定していない。さらに、同社は2002年9月末よりストリーミング配信実験に参加しているが、本格サービス開始には慎重な姿勢だ。
 「米QVCでは、オンエア済みの動画配信をすでに実施し、それらのノウハウも得ている。将来性は評価するが、現行注文受付システムの完成度も高く、実験結果や導入メリットを吟味しながら判断する」(佐々木社長)。
 また、同じテレビ通販のSHOPチャンネルも、他局との連携、ブロードバンド配信の可能性を挙げながらも、現時点では詳細未定との意見であった。



位置情報(GPS)と連動したサービス
移動受信に生かすことで
ローカル放送の目玉となるか

 「デジタルならでは」という新サービスに期待は高い。その一つが移動受信であるが、その特性をもっと生かすために研究会が動き出した。また、データ放送を受信位置と連動するサービス技術についてもNHK放送技術研究所で公開された。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


 「地域情報インフラに地上デジタルを」という新しい流れが、中部広域圏で名乗りを上げた。東海総合通信局がスタートさせた「地上デジタル放送を地域情報インフラとして活用する調査研究会」がそうだ。東海地方は2004年にITS世界会議の開催、2005年の愛知万博の開催などに合わせて、地域情報のインフラとしてデータ放送を活用することがをねらいとし、7月から立ち上げ、年度内に報告をまとめる予定だという。
 この研究会を担当する飯田武彦・東海総合通信局放送部放送課長補佐は、「提供する情報内容の具体的なイメージや、活用の仕方、どういった効果が期待できるのかなど、実証実験を行いながら、事業化を考える関係者に役立つ提言をまとめたい」と話す。この実験では、一方的な情報提供だけではなく、双方向機能を生かした位置情報(GPS)と連動した情報提供にも取り組む。大いに研究成果を期待したい。
 また、NHK放送技術研究所の公開で、次世代データ放送サービスとして、受信位置に応じて必要な情報を自動的に送り出す「位置連動型データサービス」の開発状況が展示された。災害などの際、受信ポイントによってより細かく正確な情報を手に入れられるわけで、情報の機動性に関心が集まっていた。


(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい




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