<総力特集 地上デジタル放送カウントダウン'03年問題>
編集長の着眼

2002年12月号掲載(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
現状では「2011年アナログ停波」のスケジュールは
絶対に不可能
デジタル対応テレビの製造が追い付かない

 この間、地上デジタル放送の関連を隈なく取材して歩いた。その際、いわゆる「戦略的な論」ではなく、現在何が行われているのかという「事実」にこだわった。そこから見えてきたこと−−それは至って簡単なことだった。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


全世帯のテレビは
1億2,000万台
7年間で全部を置き換える?!

 日本のほぼ全世帯(約4,700万世帯)に行き渡るアナログ用テレビは、1億2,000万台と推定されている。「2011年アナログ波の停止」政策を実行するには、この1億2,000万台をすべてデジタル対応テレビに置き換えることでもある。
 デジタル対応テレビ発売が本格化する2004年から2011年末までの7年間で置き換えるとなると、およそ年1,700万台のペースとなる。最近10年間のテレビ国内出荷台数は年平均900万台であるから、1,700万台は現在の倍という規模だ。
 地上デジタル放送はUHF帯となることから、アンテナの付け替えをはじめ、ケーブルテレビ、共同受信、集合住宅の共聴などへの対応も必要となる。まさに、アナログ放送50年が蓄積してきた社会的な受信システムも変更が必要であり、その対応策は千差万別で、時間がないため目白押しとなる。
 1,700万という数字が示す“呪縛”は、そうは簡単に解けまい。

2011年までの
プロジェクト体制
トップに民間人抜擢も

 この“呪縛”を解くカギはないのか。それは一つだけある。
 デジタル放送「完全移行」政策に誰が責任を持つのかを明確にすることから始まる。これは当然、総務省である。「完全移行」政策責任に基づいて推進体制を整備することだ。
 事は国家百年の計である。
 総務省に「完全移行」政策を推進する司令塔となるプロジェクトを設置する。名称は仮に「プロジェクトX」ではどうか(「バッテン」と読んではいけない)。組織の長は、原則として2011年まで異動させない人事方針で臨む。また、省内の該当各課に対する実行権限を与える。2、3年ごとに担当が変わる役所人事では何もできない。そこまで自分たちの組織を信用するな。期間限定の瞬発力を求めるならば、思い切って民間人からの抜擢もありだろう。

広報活動の意味を
十分理解する
体制づくり

 デジタル放送「完全移行」政策事業は、消費税導入に近い国家的な制度改革である。国民の理解なくして、実現はあり得ない。この「国民的理解」の必要性は、誰も異論がない。そこがまさに要注意、誰かがやるだろうと無責任体制に陥りやすい。
 広報活動こそが、プロジェクトXの重大なテーマといってもよい。省の広報などは役に立たない。内閣に官房長官が構え、ホワイトハウスには報道官がいるように、組織の“顔”がはっきりしないと、現状で何ら不満のない視聴者を納得させる広報はできない。役所仕事の「忙しくて広報まで手がまわらない」では、絶対に許されない。
 総務省には前科がある。彼らに任せていては住民基本台帳の二の舞だ。一度不信の念が生じたら、いかに信頼回復が難しいか。

アナログ用テレビは
いつまで生産か
全体の計画づくりが必要

 いつまでアナログ用テレビを売り続けるのか。テレビの寿命は、10年〜12年といわれる。2011年停波から逆算すると、本来なら地上デジタル対応のサイマルテレビが店頭にあってしかるべきだろう。
 今後、いかに早く地上デジタル対応テレビの発売計画を伝えるかである。アナログ用テレビの生産をいつ止めるのか。アメリカではDTVの普及が進まないことから、FCCのパウエル委員長が「DTVチューナー搭載の指針」を4月に発表したが、日本ではどうするのか。これに近い計画をメーカー業界も交えて提示するのか。また、しないとすれば、どういう策があるのか。このあたりをどうまとめていくか。これもプロジェクトXの役割だろう。経済産業省との連携も欠かせない。
 まさか、2011年の年末商戦でもアナログ用テレビが「お買い得セール」で並んでいることはないと思うが。

正確な表現として
「普及」ではなく
「移行」を使うべき

 「普及」という言葉が使われているが、広辞苑によると「一般に広く行き渡ること」とある。全世帯に行き渡っているテレビは、「普及」を卒業したメディアである。「普及」には「選択」できることが前提にある。今回の場合、完全移行、アナログ波の停止があるわけで、国民に選択の余地はない。「普及」では正確に伝わらないのではないか。
 「移行」という呼び方を提案したい。進捗状況を表す場合は「移行率○○%」ではどうか。2011年に停止するアナログ放送から「早く乗り換えましょう」と、理解を促すことになるのではないか。
 改めて言う。責任所在を明確にせずに、この難事業の成功はない。



(※記事の抜粋。全文は本誌をお読み下さい
 

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