<今月の表紙>
大平貴之・プラネタリウム・クリエーター
「MEGASTAR」後継機づくりに着手

2002年12月号掲載(※記事全文)

 大平貴之−−彼の名前は天体ファンの間では有名だ。その理由は、11.5等星まで映し出すという、170万個の星を再現するプラネタリウム「MEGASTAR」の製作者であるからだ。プラネタリウム・メーカー製はせいぜい2万とか3万だそうで、2ケタも違う170万という数字はまさに度肝を抜くものだ。
 「メーカーのものとはコンセプトが違うのでしょう。私は空にある星を忠実に再現したいんです。高校生のときハレー彗星を観るツアーでオーストラリアに行ったのですが、そのとき肉眼に飛び込んできた星の輝きを作り出したいと思い、それを目指しているわけです」
 彼の本職は、某メーカーで製品開発を担当するエンジニアである。が、プラネタリウム作りは「小学生の頃から作ってきており、これまでに何台作ったかは覚えていませんが、高校からは、このMEGASTARで4号機になります」というプロ顔負けのベテランなのである。表紙撮影で彼の部屋に一歩入った途端、目に飛び込んできたのがドリルであり、金ノコ、万力などの工作機器やペンチなどの工具類、パソコンやボード類であった。両親と同居する彼の部屋は、小学生の頃から工房として使ってきた年季を十分に感じさせる空気がある。
 「170万個の星を再現」と簡単には書けるが、この数だけ原板に穴を開けなければならない。そのため、レーザーによる専用製作機を自作している。写真の後ろに見える機器がそうだ。星の位置と明るさはデータが公開されているので、それをもとに直径5cm円形の恒星原板に1つずつ開けていく。こうして“手書き”された170万個の恒星は、32の恒星原板から32のレンズを通して投映される。
 「大平さんはプラネタリウムの製作者?」の質問に、「クリエーターを目指したい」と返ってきた。「どう見てもらうかをいつも考えています。今年の夏の公開では映像と組み合わせたのですが、音楽も非常に大事な要素です」との話に“クリエーター”としての彼の思いが見える。「それは単なる足し算ではなく、掛け算だと思うんです」。いまMEGASTARの次、5号機の製作に入っている。
(吉井 勇=月刊ニューメディア編集長)


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