『月刊ニューメディア』2022年6月号(2022年5月1日発売)
【巻頭 オピニオン・インタビュー⑮】
【特集】ウクライナ侵攻がむき出しにしたデジタル空間の課題
P11 「ウクライナ侵攻報道におけるネット上のフェイク対応」NHK文書回答
P11 詩「連帯と祈り ウクライナの障害のある同胞へ」
ふじいかつのり作
P12 山本龍彦・慶應義塾大学大学院法務研究科 教授に聞く
「情報戦と放送の役割」
P14 SNS動画戦争の衝撃とマスメディアの存在意義
文:辻 泰明・筑波大学教授
P16 デジタル政策フォーラム「緊急提言 3つの論点」
文:谷脇康彦・融合研究所 顧問
【特集】3・16 福島県沖の地震と災害対応「次のデジタル一手」
P20 3・16福島県沖の地震に即対応
東北大学「災害科学国際研究所」注目の動き
P22 京都大学「訓練アプリのビッグデータを南海トラフ避難に活用」
P24 東京都江戸川区「70万人区民の事前広域避難を促進する新施策」
P26 J:COM「福島県沖地震で活躍した災害対応放送・配信技術」
P27 サテライトコミュニケーションズネットワーク「マルチ画面をさらに強化“発災前の避難判断”を支援」
P29 都心部「防災」官民連携、分散電源の確保、安否確認にチャット活用
これが「次の一手」だ
P32 スカパーJSATの防災ソリューション
これまで以上に衛星は防災に役立っていく
對馬義行・スカパーJSAT 法人事業部長
池野 陽・スカパーJSAT 法人事業部 第1チーム長
古川 操・スカパーJSAT スペースインテリジェンス事業部長代行
P34 【連載】Mr.Tedのアメリカ最新メディア速報〔第144回〕
子どもの新しいオンライン保護規制
P35 【連載】趙章恩のKoreaメディアWatch〔第52回〕
Kコンテンツの飛躍を支えるバーチャルプロダクション(その2)
『愛の不時着』で有名な制作会社CJ ENMの拠点
【レポート】「NAB Show 2022」本誌カウントダウンセミナー
日本と比較しながら知る「米放送業界の広告ビジネスモデル」
P36 米・日の放送制度 ビジネス構成の違いからDXアプローチを考える
P37 大きく変化する広告と視聴調査
P39 日本の放送メディアが生かしたい米国の動向は何か
P41 Mizuno’s EYE
民放が「勝算なき同時配信」に本格参入
レポート:水野泰志・メディア激動研究所 代表
P48 放送局にゾクゾク ミステリアスtech集団❷
TBSテレビ未来技術設計部
国内とか放送とかにとらわれない“自由な発想”
P49 【連載】石川温の5G×DXレースを追う〔第25回〕
5G SAでゲームストリーミングのリアルタイム配信
P50 ウクライナ戦争で衛星ビジネス大異変
文:神谷直亮・衛星システム総研 代表/日本衛星ビジネス協会 理事
P51 3・24「日本vsオーストラリア戦」
ニッポン放送がオフチューブで実況中継
立川慎二・ニッポン放送 コンテンツプランニング部
P53 RX Japan主催「通信・放送Week」
P54 【連載】若林秀樹のニューメディア立国・都市開発シリーズ②
国家安全保障としての超伝導リニア新幹線
P58 飯田ケーブルテレビも大変身
リニア新幹線が飯田市にやってくる!
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P2 一般社団法人日本エレクトロニクスショー協会
P3 日本放送協会
P6 株式会社サーティファイ
P19 株式会社ビデオ・テック
P31 株式会社オーエスエム
P63 RX Japan株式会社
P64 株式会社ナノオプト・メディア
■連載執筆者紹介
テッド若山:米国放送業界アナリスト/NSIリサーチ 代表
趙章恩:ITジャーナリスト/KDDI総合研究所 特別研究員
石川 温:5Gジャーナリスト
若林秀樹:東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻 教授
本誌編集部声明
ウクライナでの戦争に対する本誌の決意
渡辺 元『月刊ニューメディア』編集長
カントは国際連盟の創設にも影響を与えた著書『永遠平和のために』(1795 年)で、国家間の永遠平和のための6つの条項を示している。その最後を結ぶのが次の第六条項だ。
「いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。たとえば、暗殺者や毒殺者を雇ったり、降伏条約を破ったり、敵国内での裏切りをそそのかしたりすることが、これに当たる」(※)
現在、ロシアが侵略戦争で行っているのは、この平和に向けた条項とはまさに逆の行為だ。それは、敵国民に戦争からの離反、自国民に戦争への支持をフェイクニュースや報道統制などによってそそのかす行為であり、その手段にSNS や放送などのメディアが利用されている。
そのような中、ロシアの政府系テレビのニュース番組に乱入し、「プロパガンダを信じるな」と反戦メッセージを掲げた同局編集者マリーナ・オフシャンニコワさんの勇気ある行動は、専制国家をも揺るがす可能性のある情報発信の力を教えてくれた。
本誌はロシアによる侵略に抗議する。そのうえで、メディア専門誌である本誌だからできる情報発信を実行していきたい。それは、戦争の真実を取材・調査して発信し、侵略の停止、人々の平和な生活と希望が取り戻されることを目指して取り組むメディアの活動や新しい試みを伝えることだ。また、フェイクニュースやプロパガンダ、バイアスのかかった情報発信、難民への差別、侵略国の国民への憎悪、そして時間とともに戦争の悲劇や戦災者への関心を失っていくこと――、これらにメディアや我々国民が加担していないかをつぶさに見つめ、問題があればどのように改善していけばいいのかを考え、議論し、提案することも、本誌が務めるべき使命だ。
カントは前述の条項が果たされなかったときの帰結について、次のように述べている。
「それとともにあらゆる正義も滅亡するから、永遠平和は人類の巨大な墓石の上にのみ築かれることになろう」
この戦争においてメディアで日々発信される言葉、映像、音声が、「人類の巨大な墓石」の碑文として刻まれるのではなく、「国家間の永遠平和」に向けたたゆまぬ努力の証として記録されることを目指し、本誌は使命を果たしていくことをここに表明する。(2022 年3月16日)
※イマヌエル・カント著/宇都宮芳明訳『永遠平和のために』岩波書店、1985 年