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2009年6月号掲載記事
イーエムシー(株)
アースラインノイズ除去製品の効果を
録音・再生実験の計測データと試聴で実証
スタジオやオーディオマニア向け製品を開発中
短絡や漏電による感電事故から人間を守るアースライン。しかし、産業機器や工場、レコーディングスタジオなどでは、このアースラインが逆にトラブルの原因となることがある。ノイズ電流がアースラインを逆流し、機器に誤動作やチョコ停等原因不明のトラブルを発生させるのだ。半導体分野向けの製造・検査装置の設置環境測定や、対策・コンサルティングを行っているイーエムシー(株)は、アースラインノイズを除去するアースライン用ノイズフィルターを世界で初めて開発し、種々の装置への導入実績を持つ。このたび同社は、レコーディングスタジオやオーディオマニアなどを対象にした音響分野向けのアースライン用ノイズフィルターの新製品「サウンドナイト」の製品化を進めている。
同社は技術検証を行うため3月、同社が既に発売している産業機器・工場向けのアースライン用ノイズフィルターを使い、実際の演奏を録音・再生し、その際のノイズ電流値の計測と試聴を行った。録音に協力したのは、元NHKでサラウンドの大家、沢口真生プロデューサー。録音は同氏が経営する三鷹のジャズライブハウス「UNAMAS-JAZZ」で行った。ピアノトリオによる演奏を、録音機材にアースライン用ノイズフィルターを接続した場合としない場合でそれぞれ録音した。また、沢口氏のスタジオでマスタリングを行い、5.1chサラウンドで再生した。その際もオーディオ機器にアースライン用ノイズフィルターを接続した場合としない場合のそれぞれで再生し、計測と試聴を行った。録音、再生のいずれの場合も、アースライン用ノイズフィルターを接続した場合は、ノイズが大幅に減衰していることが確認された。また、記者を含め6人で試聴した結果、録音や再生にアースライン用ノイズフィルターを接続した場合は、音が締まりメリハリの効いたクリアな音になるという、一致した感想が得られた。また、沢口氏からは、音の立上り速度が速くなり、音量も約2dB増大しているとの指摘もあった。音響分野向けのアースライン用ノイズフィルターの新製品である「サウンドナイト」も、技術的にはこの製造業向けのアースライン用ノイズフィルターと同様であるため、製品設計は既に完成しているという。今後、製品のデザインなどを行い、近く発売する計画だ。
今回の録音実験の後に、イーエムシーの山中英幸代表取締役にインタビューし、音響用製品の効果や技術、今回の実験の計測結果などについて聞いた。
アースラインノイズの減少を計測
明確にノイズ減衰効果が出ていました。アースライン用ノイズフィルターを入れたことによって、アースラインノイズが大幅に減衰しました。レコーディング実験では、コンセントからUPSに電源ラインがつながり、さらにUPSから録音機材とマイクプリアンプ2台にそれぞれ電源ラインがつながっていました。実験では、録音機材と2台のマイクプリアンプにつながっている電源コードに付いているアースラインに、アースライン用ノイズフィルターを接続した場合と、接続しない場合のそれぞれで、アースラインに流れる電流値を測定しました。アースライン用ノイズフィルターを接続しない場合は、数十~数百kHz、商用周波数の50Hzのノイズがメインで出ていました。それがアースラインノイズフィルターを接続した場合は、ばっさりとなくなっているという効果が測定されました。
インバーターやサーボモーターが原因
そうです。電気のノイズは導体が繋がっていればどこにでも入っていきます。もともとアースは安全上、保安上、短絡や漏電が発生した時に、大電流を速やかにグランドに流し、人が感電しないように、また、装置が壊れないようにするための安全ツールです。だから太い導線を使っています。逆に、ノイズが非常に通りやすい経路になっているわけです。電源ライン側には必ずフィルターやコンデンサを入れるなど、ノイズ対策のいろいろな規制が定められています。しかし、アースラインは、電流の通りを良くするために、ノイズ対策が何も施されずに、外部と機器が正々堂々と繋がっているのです。
アースラインノイズの原因は何ですか。
最も多いのは、インバーターやサーボモーターです。これらの機器はアースにノイズを流しながら仕事をしています。それがアースラインノイズの発生源となっています。現在、空調機や照明、工場で動いている産業機器などにインバーターが使われています。省エネと制御のしやすさという理由で、インバーターという制御回路を使わないということはありえないのです。先ほどのレコーディング実験のケースでは、ビルの各フロアーのいろいろな機器のノイズがビルの共通アースラインを通って、ライブハウスの録音機材に入ってきていたと考えられます。
UL(アメリカ保険業者安全試験所)の安全認証
そうです。それが最大の特色です。短絡や漏電が起きていない場合には、mA規模の漏洩電流がアースラインを流れており、それがノイズとなっています。この場合には、アースライン用ノイズフィルターの抵抗が漏洩電流を熱エネルギーに変え、熱として拡散し、ノイズを消してしまいます。短絡、漏電が発生し、100A、1,000Aという大きな電流が来ると、アースライン用ノイズフィルターに抵抗と並列に入っている素子が、磁気的に飽和をして抵抗が下がり、瞬時に導線が繋がっているのと同じ状態となり、短絡、漏電の大電流はそちらを流れます。そのため、安全性にはまったく問題がありません。当社のアースライン用ノイズフィルターは、UL(アメリカ保険業者安全試験所)の安全認証を、グランドフィルターとしてアースに使ってよいという形で取得しています。日本には、アースライン用ノイズフィルターに対応する規格のカテゴリーがありませんが、日本のお客様はUL認証を取得しているということで、安心して納得いただいています。当社はアースライン用ノイズフィルターの特許を米国、韓国、台湾、EU、日本で持っています。
イーエムシーのアースライン用ノイズフィルターの導入実績は。
多くは産業機器関係、工場関係です。一番多いのは、半導体の工場で使っている製造装置と検査装置です。その他、大手自動車部品メーカーの試験装置、液晶・プラズマ画面のメーカー、公営大型ゴミ焼却場などでも実績があります。スポーツジムで使われる筋トレマシンにも使用されています。筋トレマシンの隣でランニングマシンが動くと、サーボモーターのノイズで筋トレマシンのデジタル表示が乱れてしまうのです。今後は医療機器関係での導入も出てくると思います。今、お話がきています。アースライン用ノイズフィルターの導入企業については、業種・業界は問いません。
録音なのに「そこで楽器が鳴っているよう」
原理的には一緒です。4年ぐらい前、当社のアースライン用ノイズフィルターをある展示会に出展したとき、録音のアレンジャーをしている技術者の方が私の所に来られて、アースラインノイズにとても苦労しているとおっしゃいました。そこでアースライン用ノイズフィルターの評価をしていただきました。その結果、プロのミュージシャンの方たちが「これを使うと音が違う。再生した音を聞いているのではなく、そこで楽器が鳴っているように聞こえる」という感想を言われました。録音すると、通常はバックグラウンドにホワイトノイズが入りますが、それがアースライン用ノイズフィルターを入れることによってなくなるため、楽器の音がそのままきれいに聞こえてくるのです。
レコーディング時だけでなく、再生時にオーディオ機器に「サウンドナイト」を使うことによっても効果が出そうですね。
オーディオマニアはノイズをいかに取り払うかに苦労をしており、さまざまなアクセサリーを電源ラインやオーディオ機器に取り付けて、なんとかしようとしています。ところがアースラインノイズについては知らない方が多いのです。これは一所懸命表のドアを閉めてパッと振り向いたら、裏口のドアが開いていたというようなものです。「サウンドナイト」は、皆さんが使いやすいように電源ケーブルと一体型にして、ケーブルとして差し替えるだけで使えるようにしたいと考えています。最後に、今回このような貴重な機会を設けて下さいましたUNAMASの沢口様と演奏して下さったピアノトリオの皆さんに、心より御礼申し上げます。
実験演奏協力:佐藤守トリオ
録音マスタリング協力:沢口音楽工房UNAMAS-JAZZ
イーエムシー(株)のウェブサイト
http://www.emc.co.jp
録音機材のアースラインに接続したアースライン用ノイズフィルター(2つの白い機器)。UNAMAS-JAZZは同レーベルのCDをリリースしており、同店はレコーディングスタジオとしても使われている。沢口真生氏による録音品質は高い。例えば、3月発売の『AUDIO BASIC』2009年春号の「高品質ディスク聴き比べ」では、18枚を聞き比べした結果、ベスト2枚の一枚としてUNAMAS-JAZZの『VOL.2』(演奏:原大力 & His Friends)が推薦されている。沢口氏は今回の録音・再生実験によって、アースライン用ノイズフィルターの実力を高く評価し、「UNAMAS-JAZZでは次回のCD制作以降、録音とミキシングでアースライン用ノイズフィルターを使用して制作します」とコメントしている。
(資料提供:イーエムシー(株))
図2 ノイズ電流値の測定データ(録音・再生実験の再生時に測定(2009年3月8日実施))
(※誌面スペースの都合で雑誌に掲載していないデータ)
(資料提供:イーエムシー(株))