字幕制作システムの高度多様化提案
エル・エス・アイ ジャパン
字幕制作ワークフローをクラウド化で多彩なメリット
「Semdec For Cloud」10月リリース
エル・エス・アイ ジャパン株式会社(LSIジャパン)は、10月よりデジタル字幕制作ソフトのクラウド版「Semdec For Cloud」をリリース。
字幕制作のワークフローを大きく変える可能性を持つこの提案は、いわゆる「コロナ後」を含む新たな生活様式に即したソリューションとして注目を集めている。
( レポート:高瀬徹朗・ジャーナリスト)
家庭のPCから字幕付与作業
LSIジャパン「Semdec For Cloud」の特徴は、ズバリ、「作業場所・時間の制限解除」だ。複数人が同部屋にこもり、ひとつのコンテンツに字幕を付与していくという従来の作業環境から、各担当者が自宅PCから決められた箇所に字幕を付与する。まさに、ワークフローの大転換を提案するものだ。
「昨年来話題となっていた『働き方改革』に即した提案として準備を進めてきましたが、折からのコロナ禍により、密を避けてネットワークを中心とした作業環境へのニーズが高まったことで提案の意義が増したと考えています」(ICTソリューション本部営業推進部主任・藤野祥多氏)。
作業工程の管理においてもクラウド化のメリットは大きい。従来、作業状況の引き継ぎはPCに直接貼り付ける付箋などで伝えられることが多く、正確性や安全性で問題にされてきた。
「Semdec For Cloud」では、作業の進捗状況をシステム管理することが可能。番組単位、あるいは番組内のロール単位で字幕付与作業への参加者や進捗状況を管理し、一覧で表示することができる。責任者の管理アシストはもちろん、個々の作業者にとっても全体の把握は安定化、効率化につながるだろう。
作業自体は一般的なスペックのPCとインターネット回線があれば可能。「結婚や出産・育児などで職を離れざるをえない熟練の字幕担当者が仕事を続けやすい環境づくりにつながると考えています。熟練したスタッフの離職率が下がれば品質の維持・向上にもつながり、字幕サービスの更なる強化が期待できます」(藤野氏)。
万全のセキュリティ対策
放送前素材を取り扱う字幕付与作業において、放送局がもっとも気にするのはセキュリティ面だ。この点についても「放送局に安心してもらえるだけの体制を用意できた」(ICTソリューション本部開発1部主幹専門職・根本浩司氏)という。
ファイアウォールなどの一般的なセキュリティ管理はもちろん、ログイン時の入力条項に「企業ID」を追加。セキュリティ段階を1段引き上げ、不正なアクセスや情報漏洩に対応している。
また、仮に作業者が故意に放送前素材をインターネット投稿サイトなどにアップロードした場合、電子透かしで「どのユーザーアカウントからアップロードされたのか」を判別できるので、当人の特定が可能。さらに、作業者個々のコンテンツ取り扱いに制限をかけている。
その他、オプションとして「音声認識」と「字幕重畳」の機能を用意。音声認識オプションを利用すれば、字幕付与作業の大半を占める「文字起こし」作業の大幅軽減が可能。字幕重畳オプションは、ワンタッチでクラウド上のMXFファイルに字幕素材を重畳することができる。
何より、オンプレミスと比較した場合のコストメリットはかなり大きい。「部局で決済可能なレベルの初期投資(システム導入+1台ごとのライセンス料)でトライできます。字幕導入の敷居をかなり下げることができるはず」と藤野氏は話す。
当然、クラウドならではのシステム拡張やバージョンアップにも柔軟に対応。利用者の声に耳を傾けつつ、よりユーザーサイドに立ったクラウド提案を目指している。
@月刊ニューメディア2020年11月号掲載